転職はデメリット!?会社を辞める前に知りたい退職金の全知識
今は、一つのところにずっと働き続ける終身雇用の時代ではなくなったと言われています。もちろん、長く同じところに勤めることも、転職をすることにもメリット&デメリットが存在しています。
転職することのデメリットとして、よくあげられるのが「会社を辞めると退職金はどうなるのか?」という点です。長年企業に勤めてこそ、満額の退職金がもらえて、転職をしてしまうと退職金は出ないと思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし、そうした考え方は時期尚早です。巷にあふれた俗説に惑わされず、仕事はしっかり自分で選びたいものですよね。そのために、そもそも退職金はどういうものか?退職金の相場はどれくらいなのか?といった退職金にまつわる基礎知識をしっかり学びましょう。
その上で、自分の退職金がどうなるか、結局転職をすることが自分にとってプラスになるのかを明確にし、後悔のない人生を歩みましょう。
目次
そもそも退職金とは
そもそも退職金がどういったものなのか分かっている人は少ないのではないでしょうか。退職金と一言で言っても、実は退職金にはさまざまな種類があります。古くは、江戸時代の頃から退穏金と呼ばれる形で武士たちに支給されていました。
明治時代の頃から、熟練労働者の確保のために、長期間の在職に対して退職金が支払われるようになりました。今のような退職金が明確になってきたのは、労働組合が組織され、企業側に退職後の生活保障を要求したところに端を発し、いわゆる退職金制度が急速に普及してきた背景があります。
しかしながら、そもそも退職金という制度は法律として定まっているわけではありません。いわゆる慣習として根付いたものであって、法的拘束力はないので、企業側から退職金の一切が支給されなくても法律によって罰せられることはありません。
とはいえ、退職金のあるなしは重要なものなので、求人票などにも記載されています。転職する場合も、転職サイトなどでそうした記載があるかどうかチェックするのを忘れないようにしましょう。
退職金は法律には無い
従って、個人と企業がどのような雇用契約を結んでいるかどうかが退職金の有無や退職金の内容に関わってきます。新卒で企業に就職すると、雇用契約の内容をチェクすることがないかもしれませんが、自分がどのような条件で就業しているのか?は転職前に確認しておくと良いでしょう。
退職金がもともとない企業であれば、途中で転職してもしなくても退職金は出ません。ある意味で、良い条件の企業が見つかれば、すぐに転職しても退職金の面では損をすることはありません。
転職前によく考えなければいけないのが、退職金が出る場合です。出るといっても、必ずしも転職するときにもらえるとは限りません。なぜならば、退職金をもらうための条件も各企業によって定められているためです。
条件を満たしていなければ、最悪の場合、長年勤務していても退職金を受け取れないことがあります。それゆえ、転職を決意する前から、本来であれば、自分の所属する企業の退職金制度については調べておくべきです。
知っておきたい4種類の退職金
1.退職一時金
そもそも、退職金にはいくつかの種類があります。一般的に退職金と呼ばれるのが、退職一時金と呼ばれるものです。退職一時金は、これまでの仕事に対する功績として、基本給×勤続年数×給付率が支給されるのが標準的です。
ただし、この退職一時金制度も役職や勤続年数、入社時の学歴などで給付率が変わったりします。中途で退職する場合でも支払われる企業もありますが、退職理由などによって支給されないこともあります。
2.中小企業退職金共済
退職金として、保険という形で支給されるのが中小企業退職金共済です。中退共と省略されて呼ばれることもあります。中小企業では、退職一時金を用意するのが難しいケースもあるため、企業が一定の掛け金を支払うことによって、退職者にまとまった金額を支給する仕組みです。
企業側が被雇用者一人一人をアカウントで管理しながらやっているため、退職時であれば、その期間までの掛け金に応じて支払われます。この場合はどの共済を利用していて、共済の規定通りに支払われていれば、転職時でも退職金として受け取ることが可能です。
3.企業年金
そして、近年増えてきているのが、いわゆる企業年金と呼ばれるものです。大企業ともなると、退職金+企業年金というところもありますが、両方支給されているのは、厚生労働省の「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によると、わずか17.1パーセントにすぎません。
企業年金とは、老齢年金とも呼ばれるものです。老後のために、賃金として支払わない後払いのお金に対して、その期間運用して利息をつけたものが企業年金の始まりです。バブル崩壊以後、企業自体が資産運用をしても約束した利息分を払うことが保証できなくなってきました。
最近では、企業年金として確定拠出年金(企業型)を退職金とする企業も出てきています。確定拠出年金は、従業員が運用先を指定して運用益も含めた金額が拠出される仕組みです。
確定拠出年金の概要
確定拠出年金(企業型)は、そもそも「確定拠出年金法」に基づく年金制度です。導入された時は、日本版401k等と呼ばれていて、現在はDCと一般的に呼ばれています。確定拠出年金(企業型)は、掛け金は企業側が負担する点で、確定拠出年金(個人型)との違いです。ただし、運用先の選定は社員が決定するので、個人が投資信託などの金融商品について知識を持たなければいけない時代となってきています。
運用益が退職時に社員に給付されるわけですが、運用実績によって給付額が変動します。それゆえ社員がすべてのリスクを取らねばならず、最悪の場合掛け金よりも目減りした金額を受給することになります。
確定給付型年金の概要
また、確定給付企業年金法に基づく企業年金制度もあります。DBと呼ばれることもあります。確定給付型と呼ばれる年金は、掛け金は基本的に企業側が負担してくれる年金の制度です。拠出型とは異なり、企業側が一括運用し、また給付額は企業側が保証しています。社員に責任やリスクはありませんし、加入者が拠出することも可能です。
現在は、キャッシュバランスプランと呼ばれる確定給付型年金と確定拠出型年金の中間にあたる制度もあります。掛け金は企業が負担してくれますが、支給額については一定程度まで保証されるものです。
実際の支給額は、補償額プラス運用した額で、景気変動によって金額が変わります。つまり、企業業績がよく、景気が上昇傾向であれば退職金も増額されます。反対に企業業績が悪く、景気が下降傾向であれば、退職金の減額が見込まれます。
4.成果報酬型のポイント制退職金制度
最近は、年功序列制度が変わり、成果報酬型の退職金というのも存在しています。例えば、企業への貢献度をポイント化して、ポイントに応じて退職金を算出する制度となっています。
現状、勤続年数とともに、役職や職能によってポイント化されているため、長年勤めて実績を積んだ人であれば、一定額の退職金が見込める制度になっています。また、現段階では基本給と連動しておらず、退職金のみが成果主義の対象になっているのが特徴です。
退職金の相場はどれくらい?
ある程度の勤務年数があるならば、退職金を得られることが確認できました。では、退職金の相場とはいくらなのか気になるところでしょう。実際に退職金は、その企業での在職期間が基準となります。
厚生労働省や東京都産業労働局によるアンケート調査では、主に勤続年数別に集計が出ています。勤続年数10年の場合、およそ114.8万円、勤続年数25年の場合、およそ562.6万円です。これらはいずれも自己都合の場合の目安となっています。
ちなみに定年退職であれば、勤続年数20年以上のモデルケースで1138.9万円となっています。これらの数値は大卒の場合で、高専や短大であれば大卒の80%程度、高卒であれば大卒の70パーセントが相場とされています。
退職金が多い企業とその理由
現在、一般的な退職金を給付している企業は日本全体で75.5%ほどにとどまっています。つまり、4人に1人は定年まで働き続けても退職金がもらえないことになっています。しかも、この数値は従業員30人以下の企業には該当していません。それゆえ、少人数の企業も含めると、退職金がもらえる人の数はもっと少ないのが実情です。
退職金の額は、民間企業であれば、中小企業よりも大企業の方が一般的に多いです。また、公務員は臨時任用でも退職金が支払われるため、退職金の支給は手厚い傾向にあります。ただし、非常勤では退職金は支払われないので、民間企業同様、非正規雇用にとって退職金は無縁と思った方が良いでしょう。
自社の退職金について調べる
退職金が出ない企業も増えている今、退職金の相場は業種や職種によって変わってきています。退職時の事情によっても、もらえる退職金の種類はさまざまです。企業によっては、転職する前に3年ほど勤めていれば脱退一時金という形で退職金を支払ってくれるところもあります。
それゆえ、まずは自社の退職金を調べるのが先決です。退職金について企業に尋ねるとリストラ候補になるといった噂がありますが、噂は噂です。上司に尋ねても良いでしょうし、人事に聞けば自動的に計算してくれるところもあります。
もし、気になるようなら労組に尋ねても良いでしょう。ただ、退職金についてはあくまでも正社員に支払われるものです。派遣社員や契約社員といった形態では支払われません。アルバイトでも同様なので、その意味では非正規雇用ならば退職金など考えずに転職を検討しても良いでしょう。
自分の退職金を計算する
人に聞くのははばかられる、もしくは都合が悪いという場合でも自分の退職金を計算する方法はあります。会社に内緒で調べたいときは、まず就業規則の退職金規程を確認するのがおすすめです。入社時に確認しておいて、改訂のたびに退職金規程をチェックしておけば、おおよその目安が分かります。
また、確定拠出年金といった自己負担のある年金がある場合は、給与明細の企業年金掛金に毎月いくら掛けているのかが記載されます。掛けた金額と年数が分かれば、概算が可能です。
ただ、正確な金額については、やはり会社の労務・人事に尋ねるのが確実です。将来の資産計画のためなどと言えば、問題なく教えてくれます。[a]労働者が年金の運用先を選んだり掛け金を考える今、退職金の額を聞くことが直接的に退職や転職につながると考える会社は少数派です。
若年層の退職金について
転職を考える世代としては、20代〜30代の若年層となります。各企業によって退職金の相場は異なりますが、平均的に最低3年ほど勤めると退職金がもらえます。それゆえ、3年ほどとりあえず勤めてみてから転職を考えてみるのは退職金の面でも大事です。
大卒で3年経過すると25歳時点で、自己都合の退職の場合は平均23.6万円、会社都合の場合は平均37.5万円です。自己都合よりも会社都合でやめる場合の方が、退職金は増額されます。もし企業側の都合で辞めるにも関わらず、自己都合にしてほしいと言われても自己都合にしないことが退職金を減らさないために必要なことです。
1年や2年でも退職金を出してくれる企業もありますが、全体の16%ほどにとどまっています。あくまでもモデルケースは、日本の大企業をベースとしており、中小企業などは含まれていません。現在、高度な経済成長が見込みにくい日本企業において、退職金は減少していく可能性も高いので、現在の平均値より増加するのは難しいと予測されています。
公務員の退職金について
また、これまで民間企業の退職金について述べてきましたが、公務員の退職金は、法律もしくは条例で定められています。退職金=退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給率+調整額の計算式でもとめることができます。
退職理由は、自己都合か会社都合かの場合と同じく、自己都合の場合は支給額が下がります。俸給月額というのは、公務員の級によって変わります。級は、民間企業における役職に似たようなもので、勤続年数によって変化します。
その意味でも、民間企業と同じく勤続年数に合わせて退職金は基本的に増加傾向にあります。ただし、公務員の大卒か高卒か、国家公務員か地方公務員かなどで金額が変わります。
早期退職制度の場合
近年増えているものとして、早期退職制度があります。通常の退職と異なり、一定年齢以上の従業員を対象に、退職金等を割り増しする代わりに定年前に早めに退職してもらう制度です。それゆえ、自己都合や会社都合で退職するよりも、退職金の平均は高くなっています。
また、退職金の金額は、大卒と高卒で大きく差が出ますが、高卒でも技術職や管理職についている場合は、退職金の額は一般の高卒より高くなります。公務員でも同様です。
退職金に税金がかかるか
また、退職金は、退職所得と呼ばれる収入に分類されるため、税金がかかります。税金がかかるのは退職金のうち、退職所得となる分のみです。それゆえ他の所得に比べて税制の優遇があります。
税金の計算方式も勤続年数によって異なり、20年以下の場合は、40万円×勤続年数(ただし、最低80万円)で、20年超だと、800万円+70万円×(勤続年数−20年)となります。このときの勤続年数について、1年未満の部分は、切り上げが行われ、1年としてカウントされます。
さらに、課税は分離課税となるため、源泉徴収を希望する場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。提出されている場合は、確定申告をする必要がありません。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、収入金額に対して、一律で20.42%の源泉徴収が行われます。
退職金目線から考える転職
退職金のことを考えると、現状退職金が出る企業に勤めている場合は定年まで勤めるのがもっとも多く退職金を得られる計算になります。そのため、転職には慎重になるべきですが、中小企業よりも大企業の方が退職金が多い計算なので、大手に転職するならば、退職金の総額は増えます。
もちろん、非正規雇用から正規雇用になれば、退職金を得られる機会ができるため、積極的に行うべきでしょう。そして、勤める年数によって退職金は増えるので、転職回数は少ない方が退職金の額も多くなります。現状、勤続3年で最低限の年金がもらえるため、なるべく早めに納得のいく職場に転職する方が退職金は増えますが、やめるタイミングは重要といえます。
結局、転職すべき?
結局のところ、転職すべきかどうかは個人の事情にもよるでしょう。ただし、退職金のことを考えると転職はあまりおすすめできるものではありません。退職金とは長年務めた人への功労を含みます。勤め続けることができれば、ほぼ確実にもらえるまとまった金額であるともいえるわけです。
とはいえ、今後働き方改革なども起こってくることが予想されます。そうなると、いままで確実だった制度などにも変更が起こりえます。平均寿命が伸びている今、健康寿命も伸びてきていて一生現役といった言葉も聞かれるようになりました。
何より、やりたいことができて新たな職場を求めるといったポジティブな理由なら転職するのも一つの手でしょう。退職金は企業が利益をあげていればこそ支給されるもの。業績悪化で退職金が支払わないことも今後増えてくることが見込まれます。
こちらの記事も参考にしてみて下さい。
まとめ
転職したいと思いつつ、退職金などのお金のことを考えると転職するのもやめようかなと思う人もいるでしょう。実際に、退職金といった制度が機能するのは高度な経済成長があってこそ。経済的な低迷が続く日本では、いままで当たり前のように払われていた退職金がもらえない人が増えていくことでしょう。
それよりも、新しい経験を求めて転職をした方が独立や起業といったことにつながるケースもあります。職場を転々とすればどこの会社からも退職金は支払われません。もちろん、自営業者には退職金という存在はなく、独立・起業したからといって成功するとは限らないのが一般的です。
一度きりの人生ですから、後悔するような人生を歩むのはおすすめできません。しかし、退職金などのお金のことはしっかり計算してから、仕事をやめるかどうかを考えるのも大事といえるでしょう。
【関連記事】
人生変えたい人はおすすめ副業を厳選した記事をご覧ください。
→サラリーマンにおすすめの副業ランキングTOP31!在宅でバレずに稼げる仕事
→家でできる仕事(在宅ワーク)42種類|本業・副業で稼げる自宅の職業一覧